政治や世界を物理学的にみると、こうなっちゃいました…

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昔々、いや、それほど昔ではない現代社会のある所に、大学教授を引退した、「師匠」と、彼を慕って来る、秋山くんとの、ある会話です。

秋山「政治や世界を見る時、民主主義や独裁政治、経済のあり方など多岐にわたります。しかし、どの政策を行ってもうまくいっていないように見受けられますが、どのように俯瞰すればよいのでしょうか?」
師匠「たしかに、専門家の言っていることは、正しいと思うのじゃが、物事が大きすぎて、しかも複雑じゃから、なかなか思った通りには行かない、といったところじゃろう。わしの専門は物理じゃから、偏見は承知の上で、世界の見方をぶった切ってみたい。」
秋山「お願いします。」
師匠「大きな目で見ると、世界の動きは『多体系』として扱えるじゃろう。つまり、同じような大きさの物体や様々な力が互いに引っ張り合ったり、押し合うという状況じゃ。任意の外力なども、ある一定周期によってもたらされるというのも組み込めるかもしれん。かなりの複雑系じゃ。」
秋山「こういう状況だと、ほぼ、予測不能じゃないですか?」
師匠「確かに複雑怪奇で予測不能じゃと思うが、ある一定のパターンや統計的な切り口で、見ることで何かしら予測するパラメータが見つかるかもしれん。が、次のように見てもらうと面白いと思う。」
秋山「といいますと?」
師匠「昔のように、技術も人口も限られ、自治において、国王などに権力が集中しておれば、大体の予測は可能になる。まさに、線形システムじゃ。しかし、それぞれの国が力を持ち、資本家がいて、宗教組織、頭脳集団も独立している。さらに、現在のように個人でもそれなりの技術にアクセスできるようであれば、まさに非線形のカオスシステムじゃ。しかし、一定のルールや法則は、機能している。もちろん、それは、法律や条約だけとは限らない、宗教、哲学、文化に根差している法かもしれん。」
秋山「なるほど…」
師匠「カオスというのは物理的にはランダムではない。つまり、上のようなシステムはひじょうに複雑ではあるが、完全な無政府状態ではない。もちろん、定量化できるかもしれんが。ただし、予測ができる時間は短くなるかもしれない。これは、天気予報もそうじゃが、最も、単純な雲の動きを想定しても、数日間くらいまでしか予測できない、といわれておる。」
秋山「現在の天気予報は、多大なパラメータとスーパーコンピュータを使ってできる限り予測してますよね。」
師匠「うむ。世界の予測もそうなるじゃろ。いや、もうやっているかもしれん。先日のニュースの記事で、人工知能を使って、世界政治や経済を予測しておった。人工知能というと大それたように聞こえるが、基本はデータマイニングじゃな。ま、こういう統計的なデータと微分方程式を使った予測可能性を認識すること自体が大事かもしれん。というのも、多くの人は、複雑さと予測不可能性が前にはだかると、思考停止になってしまう傾向もある。」
秋山「うーん。科学は何が分かっているか、わかっていないかが重要ですし、そう分析すると、何かが見えてきますよね。」
師匠「次に、政策における矛盾がどこから来ているかじゃ。保守とリベラルが互いに相補的であると信じられながら、実際の政策においては、相補しきれない点がある。つまり、イデオロギーではなく、現実的な法制定や行政において、両立しえないのは、イデオロギーが一部の原因ではないか、ということじゃ。」
秋山「少し難しくなってきましたね。もう少し簡単に説明してくれませんか?」
師匠「政治的配慮を行うためには、相対するパラメータがある。例えば、多数派か少数派か、福祉優先か金持ち優遇か、など色々とある。これらは、こっちを立てればあっちが立たないという共役関係にあるものだ。」
秋山「共役関係というと、物理では、位置と運動量みたいなものですか?」
師匠「そうじゃ。正に、イデオロギーの下でどちらかだけに偏った政策を打てば、不確定性原理のように、相対する、もう一方のパラメータの誤差が無限大になってしまい、政権が交代するたびに、大事なものが壊されていくのじゃ。もちろん、これは量子論とは原理的に関係はないが、本来共役関係にある政策は、ある一定の誤差を容認して両方の一方を強めながら進めていかなければならない。そういうことへの認識が重要ということじゃ。」
秋山「たしかに、イデオロギーや個々人の実存、出生など、メディアも煽ったりしますよね。これによって後引きできないという不健康な環境も温床になっているような…」
師匠「うむ。われわれは歴史から学ぶことができる。いわゆる、過去に起きたことを『実験』結果と見ることができるという意味でじゃ。しかし、完全にコントロールされた実験ではないゆえに、それに基づいた予測にもいろいろと想定外のことが出てくる。」
秋山「確かに、過去に起こったことと全く同じ条件を人間社会で作ることは不可能ですからね。」
師匠「このような時代、ある意味、そういう不可能性や不確定性を認識してどう行動するかが重要になるのかもしれんな。」

大人のための家庭教師

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