ヴォルフガング・パウリというドイツ出身の物理学者がいました。1945年にノーベル賞を受賞したのですが、生涯にわたって、物理の理論に多くの貢献をしたことでも有名です。
まぁ、歯に衣着せぬ文言や批判も多い人でもありました。また、「パウリ効果」と言って、彼が生粋の理論家ということで実験室に近づくと、実験器具におかしなことが起こるという半分冗談なことも言われた人でした。
実は、僕の大学院のアドバイザーのアドバイザーのアドバイザーがパウリだったそうです。もちろん、僕自身には関係ないですが、教科書の人と意外なところで身近に感じた瞬間でもありました。
彼が、発見した法則がありました。専門用語で「排他律」というのですが、ある種の粒子、例えば電子や陽子などです。これらは、エネルギーが同じであれば、いっしょにいられない、という発見です。
これに関しても、「だから何」とお思いでしょう。理論的に重要な発見でもありますが、この事実から言えるのは、これのおかげで、机や椅子など形を保っていられる、ということです。
言い換えれば、排他律に従う粒子は物質を作っている、ということです。では、排他律に従わない粒子は何でしょうか。
代表的なものは光です。光は光子という粒子の集まりですが、一つのエネルギー状態にいくつも光子が存在することができます。実際、光そのもので物質を構成しているのは見たことがないですよね。
もう一つ紹介したいのは、ニュートリノに関しての貢献です。恐らく、2017年現在でニュートリノという言葉を知らない人は、少ないかもしれませんが、ニュートリノとは何なのか、知っている人は少ないでしょう。
そもそも、この粒子の発見にパウリがかかわっていました。
簡単に説明すると、昔、ある物理学者が、放射能が出る実験的なプロセスを見てみると、エネルギーが保存しないのでは、と提唱し始めました。
しかし、パウリは、そんなことはないだろうということで、ニュートリノという粒子がその反応にはかかわっていると、予言しました。
その後、その粒子が発見され、エネルギーも保存されるということで、めでたし、めでたし、となったということです。
物理だけではないですが、物理学も、長い年月をかけて、いろいろな人の貢献の上に成り立っているということですね。