この間、テレビで火山の中を透視する技術を使って火山研究している、という話題を報道していました。この技術は、ピラミッドの中を見るためにも使われたもので、宇宙線の一つであるミューオン(μ粒子ともいう)を利用したものです。
ミューオンは電子などと同じく素粒子と呼ばれるものの一つで、当然、肉眼では見えません。宇宙線は宇宙から無数に降り注ぐもので、基本的に人体や生物に害があるものは地表には届いていません。
その番組で、コメンテーターが「そのような見えないものを利用するなんて、すごいですね」と言っていました。確かに、そういう応用は素晴らしいと思いますが、少々、聞き捨てできなかったので、詳しくお話しします。
そもそも、宇宙線は、20世紀初頭、今から約100年前に発見されたものです。そこから、科学としていろいろな形で研究されてきました。
その後、物理学で量子力学や素粒子論の理論的発展も相まって、宇宙線の種類も特定されてきました。ミューオンは1936年に宇宙線から発見され、一時は、湯川秀樹が提唱した中間子だと思われた粒子です。(後に、中間子は1947年に発見されたパイオンという粒子だとわかりましたが)
つまり、ミューオンなどの粒子は、科学の世界で長い間、多くの人によって研究されてきたものなのです。100年の時を経て、今、火山やピラミッドの研究に応用されてきた、ということです。
ここで言いたいのは、応用された事実だけ称えて、それ以前の人類の努力がなかったように伝えられるのは、科学者としてはつらいものがあります。
このミューオンも含めた物理科学の研究には、いくつものノーベル賞を獲得しています。しかしながら、科学史として「どのように人類にまたその社会に貢献してきたか」という教育がされてきていない事実は、非常に残念に思います。
(日本人はノーベル賞に関して、日本人が受賞すればお祭りになりますが、その中身には、ほとんど言及しないのも残念ですが)
「エジソンは偉い人」であることに異論はありません。数々の発明などにより大きな貢献を人類の生活にしてきました。
しかしながら、エジソンの電気機器に関する発明は、その前にファラデー、エールステッド、クーロン、アンペール、マックスウェル等の電磁気に関する研究結果もあったから成り立ったという事実も知ってほしいな、と思いました。