こんな代数つくってどうするの?

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数学は定義と論理の世界であることを、簡単に説明してきました。厳密に論理的であれば、独自の世界を作ることができるのも数学の魅力なのかもしれません。

ここまで、代数に関するお話をしてきました。人にとって身近な10進数に基づいた代数もあれば、コンピュータが考えやすい2進数の代数もあります。

今回は、それとは違った定義による代数を紹介したいと思います。

通称、「マックス・プラス代数」というのですが、基本的に2つの演算子を使います。\oplus\otimes が、この代数において重要な記号なのですが、ルールは次のようになります。

まず、a \oplus b というのは、aとbを比べて、大きい方を答えとして返します。例えば、3 \oplus 5 = 5 になります。

もう一つの記号は、単純に2つの数字を足し合わせます。つまり、3 \otimes 5 = 8 になります。

やってみるとわかりますが、この代数も交換法則や結合法則が成り立ちます。一方で、特殊な演算のため、\epsilon = -\inftye = 0 という数字も使います。\epsilon は、一番小さな数として扱われます。

このマックス・プラス代数のべき乗は、x^{\otimes n} と表現され、x^{\otimes 3} = x \otimes x \otimes x = 3x となります。

なんか不思議な感覚になる世界ですが、いったい何の役に立つのでしょうか?そういうことを言うと、ファラデーに皮肉っぽく「新生児が何の役に立つのか!」といわれそうですが。。。

現在の応用では、列車の駅に到着する時間と経路に関する最適化問題に使われています。どのように設計すれば、無駄な時間が省けるかという問題です。(ほかの分野にも研究されています)

代数を通じて数学の世界を作るということを簡単に説明してきましたが、他の条件を設定したりして、他の世界も構築できる、というのが数学の醍醐味なのでしょう。

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人間ではなく、パソコンのための代数とは?

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前回は、数学とは何か、に関して代数を使って説明しました。数学的に厳密な説明ではないですが、数学とは、「論理的な独自世界を作る」と考えていいと思います。

ところで、人間の世界では、0から9の数字の組み合わせで世の中を表す方が便利ということですが、コンピュータの世界はどうでしょう。

人間が入力したり、出力を見る場合は10進数になっていますが、基本的にコンピュータが扱うのは、オンかオフ、つまり、電気がついているか、消えているかという2つの値なのです。

これを2進数と言います。0と1の組み合わせで、「すべて」の数を表現する方法です。

機械にとっては、扱う数の種類が少ないので、この方が楽なのですが、人間だと区別がつきづらいので逆に大変です。

この2進数にも四則演算があります。つまり、2進数の足し算、引き算、掛け算、割り算もできます。

基本的なルールは10進数と同じですが、扱える数字が0と1ということで、すぐ繰り上がってしまいます。

たとえば、1+1は10になります。10は十ではなく、1と0の組み合わせた数で、十進数の2にあたります。

10+1は11でいいのですが、11+1は繰り上がって、100になります。

この2進数にも代数があり、これをブール代数と言います。内容は少し専門的になるので詳細は省きますが、コンピュータの回路を組むのに便利な代数です。

ブール代数には、足し算とか掛け算という言い方はなく、AND、OR、NOTなどで演算します。いろいろなルールが導けて、十進数でもあるような交換法則も成り立ちます。

一方、2進数ならではのルールもあって、ド・モルガンの法則は、そのうちの一つです。

ブール代数という数学的「世界」は、コンピュータの仕組みを作るのに、多大なる貢献をしています。

こういう考えをしていくと、いろいろな代数世界を作ることができることがお分かりだと思います。

次回は、少し違った代数を紹介します。

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数学とは世界を作ること。代数の一部から垣間見る数学の考え方

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数学的な物の考え方というのは、物理や工学とは少し違います。元々、数学は、きちんと定義された数字や記号をもって、論理的に議論するので、純粋哲学と呼ばれていました。

定義と論理さえしっかりしていれば、数学者はどんな「世界」でも作ることができます。

あまり難しいことを言わず、この数学世界を説明したいと思います。代数というのを聞いたことがあると思います。厳密な定義は置いておき、身近なもので言えば、10進数を使った四則演算と、それに関連した記号演算を言います。

「ガムを10個買って、1000円ならば、一個あたりいくらになるでしょう。」という問題も、代数を使って解くことができます。

また、足し算や掛け算においては、どんな2つの数を使っても、足す、もしくは、掛ける順番によって答は変わりません。

例えば、「Aさんが、みかんを5個、Bさんが、みかんを7個持っています。二人のみかんの総数はいくつですか。」という問題で、5+7と計算しても、7+5と計算しても、答えは12個です。

とにかく、このおなじみの代数は、我々の生活に密着していて、足し算、引き算、掛け算、割り算など、身近なものに置き換えて表現できます。

ここで、この世界が成り立つには、いくつかの前提があることを確認しましょう。まず、10進数です。次に、足し算や掛け算の順番は答えを変えないなどのルールです。

しかし、このような「人間」にとって、当たり前の感覚を忘れて、上のような定義やルールを変えるとどうなるでしょうか?

もしくは、人間とは違う考え方で動いているシステムを想定して、新しい代数を作るとどうなるでしょうか?

次回にお話しします。

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「過剰な愛情表現は愛ではない」が数学によって証明された?

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前回は、虚数と実数が一つの平面で表すことができる、というのと、角度を使うと、三角関数だけでなく、指数関数だけで、虚数と実数をいっぺんに表せるというのが分かりました。

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この前の例では、角度が単位円上で\frac{\pi}{2}であれば、上の図でわかるように、e^{i\frac{\pi}{2}} = i、になります。

では、虚数の虚数乗はどうなるでしょうか?つまり、i^i、ですね。普通に考えれば、「これって計算できるの?」となりますが、上の結果を使うと、i^i = (e^{i\frac{\pi}{2}})^i、となります。

i \times i、はー1ですから、i^i = (e^{i\frac{\pi}{2}})^i=e^{-\frac{\pi}{2}}、となります。

これを特殊な計算機で計算すると、0.2078795…という数値になります。i^i、の結果は実数になってしまいました。

昔、大学生の頃、物理数学の講義で教授が虚数の「i」を「愛」と見立てて、愛の愛乗(つまり、過剰な愛情)は、愛にはあらず、という冗談を言っていました。

実際の数学でも、iのi乗にはiが付かないことから、上の格言が正しいと証明されたようです。(笑)

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南北は「愛」に向かう、複素平面とは何か

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この前は、指数関数が虚数を挿入することによって、波の世界に代わってしまうことを説明しました。

実は、虚数は虚構の世界の物とは断定できず、実世界を理解するのに、ひじょうに重要な概念なのかもしれない、ということです。

そこで、今日は、虚実混合の世界を表すもの、複素平面に関して説明します。

平面は東西方向と、南北方向に分けられます。東西方向は実の世界、つまり、実数を表します。実数とは、整数、有理数(分数)、無理数(ルート3など)の総称です。

南北方向は、虚数の世界です。2つ合わせて複素数と言います。また、このような座標を複素平面と呼びます。

少し話を変えますが、座標(住所)は基本的に横と縦の長さで決めますよね。例えば、「1条4丁目」のようにです。数学でも同じなんですが、場合によっては、原点からの距離と真東をゼロとして左回りの角度で表すこともあります。

ここで、数学では角度を円周の比で表します。何で?とお思いでしょうが、長さに関連させるのに便利という理由からです。

学校で習った円周は、2πrでした。もし、半径が1ならば(これを単位円といいます)円周は2πです。つまり、1周(360度)を2πと表せます。(単位はラジアンといいます。)

図を見ればわかりますが、180度は半周なので、πです。これさえ分かれば、30度でも120度でも、円周率で表現できます。

先ほども言ったように、南北は虚数を表し、東西は実数を表します。それぞれ独立していると考えていいでしょう。東西をx、南北をyとすると、座標は、x +iy になります。

もし、上のように角度を使うと、座標は、\cos \theta + i\sin \theta とも表現されます。\thetaは、角度です。本当かどうか、試してみましょう。大人のための家庭教師

 

 

 

 

 

真東から90度(2分のπ)のところに+iがあります。上の式を使うと、\cos \frac{\pi}{2} + i\sin \frac{\pi}{2} になります。コサイン90度(または、\frac{\pi}{2})はゼロになりますが、サイン90度は1になります。

したがって、\cos \frac{\pi}{2} + i\sin \frac{\pi}{2} =iになって、座標の値と一致しています。

前回のオイラーの公式を覚えていますか?e^{i\theta}=\cos \theta + i\sin \theta ですね。つまり、指数関数だけでも複素平面の座標を表すことができるのです。

面白い世界ですね。では、また次回をお楽しみに。

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指数関数の、この概念だけ知っていれば、先生も満足

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よく「指数関数的に増える」と言われますが、1つ2つと増えるのではなく、いわゆる、倍々に増えていくようなものです。

正確に言えば、倍々に増えるのは、2のx乗ですが、これに近い形で、2.718…のx乗をもって、指数関数と言います。

この2.718…というのはネイピア数と言って、学校ではいきなり出てきたように思えます。つまり、(1+1/n)のn乗のnの数を増やせば増やすほど、その数に近づきます。

この指数関数の面白いところは、その関数の変化率がその関数に等しいという性質です。

実は、この性質は物理を扱う上で非常に役に立つもので、いろいろな物理で見かけることが多いと思います。

しかも、この指数関数、この前話した虚数を入れると、倍々的に増える振る舞いから、波のように振動する振る舞いに代わるのです。

これが、有名なオイラーの公式というものですが、次のような形をしています。

e^{ix} = \cos x + i\sin x

いわゆる「愛」が全く違う関数を結び付けているという不思議なものなのですが、「愛」があればこそなのでしょう。

次回は、「愛」の世界である複素数(複素平面)の話をしようと思います。

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虚数って何?「虚構の数」の現実とは

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ルートはご存じでしょうか。平方根とも言いますが、ある数、Aをある数、Bの二乗で表せるとします。その時BはAの平方根と言います。

例えば、2は4の平方根です。3は9の平方根です。では、3の平方根は何でしょうか?それをルート記号の「√」を使って√3になります。(下の負の数の概念を踏まえれば、正確には±√3が3の平方根です。)

ところで、話が変わりますが、負の数と言えば、ゼロより少ない数として定義されています。納得いかないかもしれませんが、負の数かける負の数は正の数ということもご存じだと思います。

まぁ、掛け算というのは、演算という行為なので、負の数に負の演算をすれば、2重の負の行為ということでせいになると考えていいと思います。(このページが助けになると思います。)

では、少し元に戻って、負の数の平方根を考えてみましょう。例えばー4の平方根はなんでしょうか?平方根は同じ符号でなければならないので、二乗して負の数になる数はありません。みんな正の数になってしまいます。

そこで、考えたのが、二乗して負の数になる記号です。これをi(アルファベットのアイ)で表し、虚数と呼びます。つまり、i かける i はー1です。

われわれの生活にはなかなか現れないものですが、ひじょうに面白い数ということを次回、説明しましょう。

微分・積分、これだけわかれば簡単なこと

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微分・積分と言えば、高校数学で習いますが、文系の方で覚えておられる人は、どれくらいいるでしょうか。

xの2乗を微分すると、2xになる、とか、コサインxを積分すると、サインxになるとか、覚えている方も多いと思います。

しかし、やり方はわかるけれど、「だからなんなんだ」という人も少なくないと思います。まさに、「いつ使うんですか?」という質問です。

まず、簡単に言えば、微分は割り算(変化の割合)で積分は足し算なのです。こう考えれば、普段やっていることなので難しくないと思います。

「だったら、最初からそう言ってくれればいいのに」という声が聞こえてきそうですね。

ただ、概念的に違うのは、微分は割り算でも、「その瞬間、瞬間」の割り算であり、積分は「ひじょうに細かいもの」の足し算ということです。

では、日常的にはどういうことでしょう?車を運転で右折する際、対向車がどれくらいのスピードで走っているか感覚的に分かりますよね。実は、これ、頭の中で「微分」しているのです。

つまり、対向車が単位時間当たりにどれくらい進むかを瞬時に割り算して求めているのです。

積分はどうでしょうか。紙の上に適当な形を描くとします。円でも四角でもない不規則な形です。その面積を求める時、どうしますか?面積の公式などありません。

そこで、5ミリ四方の正方形(25平方ミリメートル)がその形の中にいくつ入るか、やってみることにします。もし、100個入るならば、2500平方ミリメートルが面積になりますよね。

実は、これが積分なのです。もっとも、正式な積分では、もっともっと小さな「正方形」で面積なり体積を求めますが、原理は一緒です。

これさえ分かれば、微分・積分も簡単なことだと思います。

遠心力って本当は存在しない?これだけ知れば、あなたもハナタカ

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物が回れば、中に入っているものが遠心力を受ける、という表現は、間違ってはいないのですが、遠心力というものが独立して存在するというのは、違います。

「車を運転して、ハンドルを右に切れば、左に体が引っ張られるじゃないか!」と言いますが、ハンドルを切る方向に力をかけたから、左に「見かけの力」が働いただけなのです。

つまり、遠心力も同じで、向心力(中心に引っ張る力)があるから、外側に離れていくような見かけの力(遠心力)が生じるということです。

このような話をすると、禅問答のように聞こえがちですよね。「あなたの言ってることは、わからないではないが、ピンとこねぇ」なんて声が聞こえそうです。。。

では、明快な例を示しましょう。糸の先に物体を付け、糸の先をもって回してみます。下の絵を見てください。

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二つの絵がありますが、いずれもBの場所で糸を離しています。もし、遠心力が実在した力であれば、左の絵のように、離れた時点で、外側に物体が飛んでいくはずです。

しかし、現実は、右の絵のように円運動の接戦方向に飛んでいきます。つまり、遠心力というのは、そもそも物体には、かかっていないのです。

多少の混乱はあるでしょうが、「本物」の力と見かけの力の違いというのは、物理学を矛盾なく進めていくのに重要である、と覚えてもらえれば、うれしいです。

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補足: ご指摘にもありましたように、ここでの説明は、あくまで初歩的なものになります。ですから、誤解を招くような表現もあるかもしれません。ただ、実際に、円運動をしている物体にかかっているのは、向心力だけです。そうでなければ、円運動を物理学的に記述できないのです。また、上の図例は、遠心力が独立して物体に働いていないことを示しているだけということも、ご了承ください。

現実には、遠心力などは非慣性系を考慮したときに出てくる力で、これを物理の用語で「見かけの力」(英語でfictitious force)と言います。もちろん、それらの力で説明できる現象などもあり、ここでは、すべてを解説していませんので、ご興味のある方は、正規の教科書を参照したり、授業を取ることをお勧めします。

これだけ知っていれば自慢できる物理の話

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身の回りで起こっていることを、数字にすると結構驚く事ってありますよね。

例えば、太陽の大きさは地球から見ると大したことがないですが、体積比で約地球の130万倍の大きさがあります。

その太陽が石炭のようなものでできているとしたら、約数千年で燃え尽きてしまいます。そんなに大きくても、それだけ勢い良く燃えていれば、すぐに燃え尽きてしまうのです。

「数千年でもすごい!」とお思いでしょうが、太陽の現在の年齢は約46億年と言いますから、数千年なんて太陽の人生にとっては一瞬の出来事です。

それでは、どうしてあれだけのエネルギーを、こんなに長い間出し続けられるのでしょうか?

実は太陽では核融合が起きて、エネルギーが放出されます。大きな太陽が生む重力が原子を狭いところに閉じ込められるために、実現できることなのです。

もう一つ、太陽がらみですが、地球と太陽の距離を想像できるでしょうか?「遠いようで近い、近いようで遠い」という感じでしょうか。まるで、お釈迦様の説教のようですが。。。

まじめな話をすると、光の速さ(電波の速さと同じ)で約500秒かかります。8分と20秒と言ったところです。中継で声だけが遅れて見えるという次元からほど遠い感じです。

これでもピンと来ませんか?では、地球の大きさをパチンコ玉くらいに縮小したとしたら、太陽までの距離はどれくらいになるか考えるといいかもしれません。

単純な比の計算、つまり、割り算をすると、100から200メートル先に太陽があるという計算になります。

結構離れてますね。常識的なものもありますが、知っているとちょっと自慢できる知識だと思います。

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