アメリカと日本の高校数学の違いとは

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最近、アメリカのマサチューセッツ州の高校に留学中の日本の方に数学を教える機会がありました。

日本で言う微分積分の基礎に関する教科です。日本では、数Ⅱ、数Ⅲと言われるものでしょう。

10年以上高校で教えている教科に関しては、全く触れていなかったので久しぶりにアメリカと日本の微積分の教科書を比べてみました。

(ちなみに、マサチューセッツは比較的教育レベルが高く、州だけでいえば、世界でも上位に来るくらいです。)

私は、以前から日本の高校数学のカリキュラムは中途半端だと申しています。今回、アメリカの教科書を見て、より良く認識できました。

アメリカの教科書は、大学で取る微積分の講義が分かるような基礎を全体にわたって教えている感じです。

一方で、日本の場合は、明らかに大学入試を作成するのに問題が起こらないように、教える範囲を制限しているように見えました。

日本の良いところは、このようなカリキュラムでも上から言われたことは、文句を言わず真面目に教えるところでしょうね。(少し皮肉っぽいですが)

逆にアメリカは、良いカリキュラムなのに、きちんと教えられる教師が少ないというのが問題のようです。

世の中では、「教育を良くしよう」とか安易なことを言いますが、それほど簡単ではないようですね。

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よくテレビで言われる物理の2つの間違い

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少し揚げ足取りっぽく聞こえるかもしれませんが、職業病と言いますか、テレビを見ていて、気になってしまうことが2つほどあります。

最初は、スタンガンの人体実験で、やられたスタッフが「電流が走ってビリビリきました」というコメントです。ほとんどの人が『電流』という言葉を使いますが、電流が流れれば、死んでしまいます。

スタンガンのビリビリ感は、電圧をかけることによって生じるものです。電圧は神経に作用します。ですから、あのような激しいしびれを感じるのです。

スタンガンだと数万ボルトの電圧を使っています。しかしながら、電流は流れないように工夫しているので、スタンガンが直接、致命傷を与えることはありません。

一方で、電流は体内を流れると、重要な臓器を焼き切ってしまいます。これは、一般の電気回路でもそうですが、電流が基準より多く流れるとフューズが切れるのはそのためです。

電流と電圧は、全く違う物理量だと、覚えておきましょう。

2つ目は、かなりマニアックですが、「360度見渡せます」というコメントです。確かに、水平な方向を保って1周、ぐるっと回るのは360度です。

しかし、空も見上げることができて天の半球すべてみられる状態は、360度のような平面角ではなく、立体角というものを使い、単位は平方度かステラジアンを使います。

半球全体を見られる角度は、約、20,626平方度か、2πステラジアンと呼ぶ方が正しいのです。

でも、こんな言い方をしたら、視聴者のほとんどが「何言ってるかわかんない!」と苦情が来ると思うので、360度でもいいかもしれませんね。

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学校で習った算数や数学ってどこで使うの?私には関係ないんじゃ。。。

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昔々、いや、それほど昔ではない現代社会のある所に、大学教授を引退した、「師匠」と、彼を慕って来る、秋山くんとの、ある会話です。

秋山「この間、ネットで、『因数分解とか中学で習ったのですが、実生活では何の役に立ちますか』という質問があって、いろいろな人が答えていたのを読んだのですが、もし、自分が聞かれたら、答えるのが難しいな、と思いました。」
師匠「うむ。確かに、数学は、ある意味、特殊なところもあるからな。生粋の数学者に同じようなことを聞いても、『わからない』と答える人が多いのもそういう理由だからじゃ。」
秋山「じゃあ、この質問は基本的に難しいんですか?」
師匠「数学者は数学的な論理世界の構築にはまっている人たちなんじゃ。それを物理学者などの科学者が、道具と見立てて、自然を理解するために応用しておる。もちろん、社会学者や医学者も数学を使って社会や医療を理解したりしている。」
秋山「因数分解の件で、回答していた人は、『計算が簡単になる』とか、『方程式の解を求めるのに使える』とか言ってましたが…」
師匠「何の役に立つか、に関しては、基礎科学や基礎数学では基本的に即時に言及できない。『基礎』というのは、そのものの性質を理解することじゃから、どう応用されるかは、他の人の気づきなんじゃ。つまり、例えて言えば、ある芸術肌の職人が自分の世界にのめりこんで、彼にとって素晴らしい作品を作ったとする。それを、他の分野の専門家が、『これは、こんなものにも使える、あんなことにも使える!』というようなものじゃ。」
秋山「あ、思い出しました。ファラデーの言った『新生児が何の役に立つのか』ですね。」
師匠「日本の代表する数学者である森重文氏も似たようなことを言っておった。『正しいと証明されたことは、いつか使われる』と。」
秋山「すばらしいお言葉ですね。」
師匠「学問には、相補的なところもあって、基礎や応用という側面だけでなく、いろいろな方向から議論されて、それを機に、また新たな発見が生じる。数学、科学、技術、工学を通じて、人類が問題を解決し、新たな問題を発見し、また哲学を見出し、いっしょに成長していくものなんじゃ。」
秋山「なるほど。いくつもの側面から構成されていることを、単純に一つの側面で結論付けること自体、物事の本質を見極められなくなってしまう、という例なのかもしれませんね。」

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微積分では、一次元の線が小さな一次元の集まりだという事実

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子供の頃、空間の次元について習ったとき、暗黙の了解というか、先生が分かりやすく教えるためなのか、「1次元の線分は、無次元の点の集まりで、2次元の平面は、1次元の線の集まりで、3次元の立体は、2次元平面の集まりである」、と認識させられていました。

概念的にはわかりやすいですが、そこから実用的な方法論というのが導きづらいという点もあります。

簡単に言うと、「だから何?」というものです。

そこで、微積分の創始者たちは、1次元の線分はひじょうに小さな線分のつながりと見ました。

また、平面は、小さな平面の集まり、立体は、小さな立体の集まりとしました。

そうすることによって、面積や体積などを計算する道具になり、様々な分野で発展することができました。

では、最初の概念は全く無駄だったのでしょうか。後付けの議論ではあるのですが、この概念は、フラクタル次元の考えに通じます。

フラクタルというのは、簡単に言うと、あるルールによって、線や面が入り組んでいく図形のことを言います。

そこで、「あるフラクタル曲線がどれだけ平面を埋め尽くすことができるのか」という見方をすれば、1次元と、2次元を結び付けることができます。

もう少し丁寧に説明すると、複雑に入り込んだ線分は、入り込めば入り込むほど、紙の上を黒く埋め尽くすということです。

そこで、フラクタル次元というものが登場します。つまり、これは、ある曲線がどれだけ紙を黒くするかという指標になります。

そうすると、1次元と2次元の間という概念ができるので、フラクタル次元には、1.5次元などのように、小数が含んでくるのです。

フラクタル次元の詳しい説明は、次回に行います。

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こんな代数つくってどうするの?

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数学は定義と論理の世界であることを、簡単に説明してきました。厳密に論理的であれば、独自の世界を作ることができるのも数学の魅力なのかもしれません。

ここまで、代数に関するお話をしてきました。人にとって身近な10進数に基づいた代数もあれば、コンピュータが考えやすい2進数の代数もあります。

今回は、それとは違った定義による代数を紹介したいと思います。

通称、「マックス・プラス代数」というのですが、基本的に2つの演算子を使います。\oplus\otimes が、この代数において重要な記号なのですが、ルールは次のようになります。

まず、a \oplus b というのは、aとbを比べて、大きい方を答えとして返します。例えば、3 \oplus 5 = 5 になります。

もう一つの記号は、単純に2つの数字を足し合わせます。つまり、3 \otimes 5 = 8 になります。

やってみるとわかりますが、この代数も交換法則や結合法則が成り立ちます。一方で、特殊な演算のため、\epsilon = -\inftye = 0 という数字も使います。\epsilon は、一番小さな数として扱われます。

このマックス・プラス代数のべき乗は、x^{\otimes n} と表現され、x^{\otimes 3} = x \otimes x \otimes x = 3x となります。

なんか不思議な感覚になる世界ですが、いったい何の役に立つのでしょうか?そういうことを言うと、ファラデーに皮肉っぽく「新生児が何の役に立つのか!」といわれそうですが。。。

現在の応用では、列車の駅に到着する時間と経路に関する最適化問題に使われています。どのように設計すれば、無駄な時間が省けるかという問題です。(ほかの分野にも研究されています)

代数を通じて数学の世界を作るということを簡単に説明してきましたが、他の条件を設定したりして、他の世界も構築できる、というのが数学の醍醐味なのでしょう。

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人間ではなく、パソコンのための代数とは?

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前回は、数学とは何か、に関して代数を使って説明しました。数学的に厳密な説明ではないですが、数学とは、「論理的な独自世界を作る」と考えていいと思います。

ところで、人間の世界では、0から9の数字の組み合わせで世の中を表す方が便利ということですが、コンピュータの世界はどうでしょう。

人間が入力したり、出力を見る場合は10進数になっていますが、基本的にコンピュータが扱うのは、オンかオフ、つまり、電気がついているか、消えているかという2つの値なのです。

これを2進数と言います。0と1の組み合わせで、「すべて」の数を表現する方法です。

機械にとっては、扱う数の種類が少ないので、この方が楽なのですが、人間だと区別がつきづらいので逆に大変です。

この2進数にも四則演算があります。つまり、2進数の足し算、引き算、掛け算、割り算もできます。

基本的なルールは10進数と同じですが、扱える数字が0と1ということで、すぐ繰り上がってしまいます。

たとえば、1+1は10になります。10は十ではなく、1と0の組み合わせた数で、十進数の2にあたります。

10+1は11でいいのですが、11+1は繰り上がって、100になります。

この2進数にも代数があり、これをブール代数と言います。内容は少し専門的になるので詳細は省きますが、コンピュータの回路を組むのに便利な代数です。

ブール代数には、足し算とか掛け算という言い方はなく、AND、OR、NOTなどで演算します。いろいろなルールが導けて、十進数でもあるような交換法則も成り立ちます。

一方、2進数ならではのルールもあって、ド・モルガンの法則は、そのうちの一つです。

ブール代数という数学的「世界」は、コンピュータの仕組みを作るのに、多大なる貢献をしています。

こういう考えをしていくと、いろいろな代数世界を作ることができることがお分かりだと思います。

次回は、少し違った代数を紹介します。

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数学とは世界を作ること。代数の一部から垣間見る数学の考え方

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数学的な物の考え方というのは、物理や工学とは少し違います。元々、数学は、きちんと定義された数字や記号をもって、論理的に議論するので、純粋哲学と呼ばれていました。

定義と論理さえしっかりしていれば、数学者はどんな「世界」でも作ることができます。

あまり難しいことを言わず、この数学世界を説明したいと思います。代数というのを聞いたことがあると思います。厳密な定義は置いておき、身近なもので言えば、10進数を使った四則演算と、それに関連した記号演算を言います。

「ガムを10個買って、1000円ならば、一個あたりいくらになるでしょう。」という問題も、代数を使って解くことができます。

また、足し算や掛け算においては、どんな2つの数を使っても、足す、もしくは、掛ける順番によって答は変わりません。

例えば、「Aさんが、みかんを5個、Bさんが、みかんを7個持っています。二人のみかんの総数はいくつですか。」という問題で、5+7と計算しても、7+5と計算しても、答えは12個です。

とにかく、このおなじみの代数は、我々の生活に密着していて、足し算、引き算、掛け算、割り算など、身近なものに置き換えて表現できます。

ここで、この世界が成り立つには、いくつかの前提があることを確認しましょう。まず、10進数です。次に、足し算や掛け算の順番は答えを変えないなどのルールです。

しかし、このような「人間」にとって、当たり前の感覚を忘れて、上のような定義やルールを変えるとどうなるでしょうか?

もしくは、人間とは違う考え方で動いているシステムを想定して、新しい代数を作るとどうなるでしょうか?

次回にお話しします。

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「過剰な愛情表現は愛ではない」が数学によって証明された?

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前回は、虚数と実数が一つの平面で表すことができる、というのと、角度を使うと、三角関数だけでなく、指数関数だけで、虚数と実数をいっぺんに表せるというのが分かりました。

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この前の例では、角度が単位円上で\frac{\pi}{2}であれば、上の図でわかるように、e^{i\frac{\pi}{2}} = i、になります。

では、虚数の虚数乗はどうなるでしょうか?つまり、i^i、ですね。普通に考えれば、「これって計算できるの?」となりますが、上の結果を使うと、i^i = (e^{i\frac{\pi}{2}})^i、となります。

i \times i、はー1ですから、i^i = (e^{i\frac{\pi}{2}})^i=e^{-\frac{\pi}{2}}、となります。

これを特殊な計算機で計算すると、0.2078795…という数値になります。i^i、の結果は実数になってしまいました。

昔、大学生の頃、物理数学の講義で教授が虚数の「i」を「愛」と見立てて、愛の愛乗(つまり、過剰な愛情)は、愛にはあらず、という冗談を言っていました。

実際の数学でも、iのi乗にはiが付かないことから、上の格言が正しいと証明されたようです。(笑)

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南北は「愛」に向かう、複素平面とは何か

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この前は、指数関数が虚数を挿入することによって、波の世界に代わってしまうことを説明しました。

実は、虚数は虚構の世界の物とは断定できず、実世界を理解するのに、ひじょうに重要な概念なのかもしれない、ということです。

そこで、今日は、虚実混合の世界を表すもの、複素平面に関して説明します。

平面は東西方向と、南北方向に分けられます。東西方向は実の世界、つまり、実数を表します。実数とは、整数、有理数(分数)、無理数(ルート3など)の総称です。

南北方向は、虚数の世界です。2つ合わせて複素数と言います。また、このような座標を複素平面と呼びます。

少し話を変えますが、座標(住所)は基本的に横と縦の長さで決めますよね。例えば、「1条4丁目」のようにです。数学でも同じなんですが、場合によっては、原点からの距離と真東をゼロとして左回りの角度で表すこともあります。

ここで、数学では角度を円周の比で表します。何で?とお思いでしょうが、長さに関連させるのに便利という理由からです。

学校で習った円周は、2πrでした。もし、半径が1ならば(これを単位円といいます)円周は2πです。つまり、1周(360度)を2πと表せます。(単位はラジアンといいます。)

図を見ればわかりますが、180度は半周なので、πです。これさえ分かれば、30度でも120度でも、円周率で表現できます。

先ほども言ったように、南北は虚数を表し、東西は実数を表します。それぞれ独立していると考えていいでしょう。東西をx、南北をyとすると、座標は、x +iy になります。

もし、上のように角度を使うと、座標は、\cos \theta + i\sin \theta とも表現されます。\thetaは、角度です。本当かどうか、試してみましょう。大人のための家庭教師

 

 

 

 

 

真東から90度(2分のπ)のところに+iがあります。上の式を使うと、\cos \frac{\pi}{2} + i\sin \frac{\pi}{2} になります。コサイン90度(または、\frac{\pi}{2})はゼロになりますが、サイン90度は1になります。

したがって、\cos \frac{\pi}{2} + i\sin \frac{\pi}{2} =iになって、座標の値と一致しています。

前回のオイラーの公式を覚えていますか?e^{i\theta}=\cos \theta + i\sin \theta ですね。つまり、指数関数だけでも複素平面の座標を表すことができるのです。

面白い世界ですね。では、また次回をお楽しみに。

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指数関数の、この概念だけ知っていれば、先生も満足

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よく「指数関数的に増える」と言われますが、1つ2つと増えるのではなく、いわゆる、倍々に増えていくようなものです。

正確に言えば、倍々に増えるのは、2のx乗ですが、これに近い形で、2.718…のx乗をもって、指数関数と言います。

この2.718…というのはネイピア数と言って、学校ではいきなり出てきたように思えます。つまり、(1+1/n)のn乗のnの数を増やせば増やすほど、その数に近づきます。

この指数関数の面白いところは、その関数の変化率がその関数に等しいという性質です。

実は、この性質は物理を扱う上で非常に役に立つもので、いろいろな物理で見かけることが多いと思います。

しかも、この指数関数、この前話した虚数を入れると、倍々的に増える振る舞いから、波のように振動する振る舞いに代わるのです。

これが、有名なオイラーの公式というものですが、次のような形をしています。

e^{ix} = \cos x + i\sin x

いわゆる「愛」が全く違う関数を結び付けているという不思議なものなのですが、「愛」があればこそなのでしょう。

次回は、「愛」の世界である複素数(複素平面)の話をしようと思います。

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